ヴィブラスラップは、キハーダ(ジョーボーン)代用楽器。
キハーダの現代版となる体鳴楽器・打楽器で動物の顎骨(がつこつ)のがたがたのような音がする。
ヴィブラスラップヴィブラスラップとは
ヴィブラスラップ(Vibraslap)は、キハーダ(quijada、ジョーボーン)を代用する目的で考案された打楽器・体鳴楽器である。動物の顎骨を叩いたときに生じる、内部の歯などが細かく振動するような独特の「ガタガタ」「カラカラ」という音を、金属製の構造によって再現する。
キハーダは、乾燥させたロバなどの動物の顎骨を打楽器として使用するもので、特にラテンアメリカの音楽で知られている。顎骨を叩くと、骨そのものだけではなく、残っている歯が振動して独特の連続的な音を生み出す。この特徴的な音を、動物の骨を使用せずに演奏できるようにしたものがヴィブラスラップである。
ヴィブラスラップの構造
一般的なヴィブラスラップは、左右に伸びた金属製の棒状のフレームと、その両端に取り付けられた箱状の部分から構成されている。一方の端を手で持ち、反対側の箱状部分を手や膝などに軽く打ち付けることで、内部の金属部品が振動する。
この内部の振動によって、キハーダに似た「ガタガタ」という音が発生する。
通常のドラムのように打面を強く叩いて単発の音を出す楽器とは異なり、ヴィブラスラップでは一度衝撃を与えることで、その後に内部の部品が連続して振動する。そのため、独特の減衰音を持っている。
ラテン音楽からポピュラー音楽へ
ヴィブラスラップはキハーダに由来する楽器であるため、ラテン音楽との関係が深い。しかし、その特徴的な音は非常に認識しやすいため、ラテン音楽に限らず、ポップス、ロック、映画音楽、テレビ番組の効果音など、さまざまな場面で使用されてきた。
特に「何かが滑稽に壊れる」「コミカルな出来事が起こる」といった場面で効果音として使われることも多く、音そのものが一種の記号として認識されている。
「ガタガタガタ」という独特の音には、一般的なドラムやシンバルとは異なるユーモラスな印象がある。そのため、リズム楽器として演奏するだけでなく、楽曲や映像の中で特定の雰囲気を演出する目的でも利用される。
体鳴楽器としての特徴
ヴィブラスラップは、膜を張ったドラムのような膜鳴楽器ではなく、楽器そのものが振動して音を発する体鳴楽器に分類される。
楽器の内部構造によって生じる振動が音源となるため、キハーダと同じく、非常に特殊な音色を持つ。
ヴィブラスラップの面白さは、単純な構造に見えて、実際に音を出すと非常に複雑な響きが得られる点にある。衝撃をきっかけとして内部の部品が連続的に振動するため、一回の動作から複数の細かな音が発生する。
この「一打でガタガタと音が続く」という性質が、ヴィブラスラップを他の打楽器とは異なる存在にしている。
キハーダの音を現代的に再現する楽器
キハーダは独特の音を持つ一方、天然素材である動物の顎骨を使用するという特徴がある。そのため、現代の楽器として扱いやすく、安定した構造でキハーダ特有の音を再現する手段として、ヴィブラスラップが広く使われるようになった。
つまりヴィブラスラップは、単なる珍しい打楽器ではなく、伝統的なキハーダの音響的特徴を別の構造で再現した「現代版キハーダ」と見ることができる。
楽器の形状そのものも特徴的で、演奏者が持って操作する姿も一般的な打楽器とは異なる。
キハーダからヴィブラスラップへと置き換えることで、独特の顎骨のような音を比較的容易に楽曲へ取り入れられるようになったのである。